星部が担当させていただきました、4曲についてのライナーノーツです。
前もって言っておきますが、今回はかなりの長文です。
作詞・作曲を担当いたしました。
この曲の原型を作ったのは、おそらく2009年〜2010年あたり。
2012年には「第2回FOREST AWARD NEW FACE オーディション」に当時組んでいたユニットでこの曲を提出しました。
オーディション自体は書類選考で落選するもこの曲は評価していただき、そこから作家見習いのような形でアップフロントとの関わりを持つことが出来るようになったきっかけの曲です。
約10年前に作った曲が今回こうしてBEYOOOOONDSの記念すべきメジャーデビュー曲になるとは、本当に有難いことです!
制作当時は自分のユニット用曲として書いていたので、主人公の男の子が毎朝電車で見かける「眼鏡の女の子」に恋をするという内容でした。
主人公の性別が逆ですが、ストーリーの大枠はほぼ変わっていません。
しかしここからBEYOOOOONDSの「眼鏡の男の子」という寸劇アリの完成形に至るまでは、それはそれは長い道のりが待っていました。。。
と言っておいて結構記憶も曖昧な部分も多いので、当時のメールのやり取りなんかも見ながら振り返ってみたいと思います(笑)
まず原型の「眼鏡の女の子」のアレンジはHip-Hop寄りの重めのビートでした。
これを2012年のオーディション前に現在のシャッフルビートのアレンジに変更。
これは僕の大好きなStevie Wonder「Part-Time Lover」オマージュで、もっと楽しく踊れるようにと変更しました。
作曲に関しては、ギターを弾きながらサビ部分はスラスラと5分位で作ったように記憶しています。
「眼鏡 眼鏡」や「取ったってぇな」はメロディーと同時に出てきたフレーズで、このように自然と口をついて出た歌詞は印象的になることが多いように思います。
こうして良い感じのサビが出来てしまうと、作家的には90%完成といった気持ちになります。
ただあと10%を作るのが結構大変だったりするのですが。
それからオーディションに提出し、この曲を気に入っていただき、長い熟成期間に入ります。
5年後の2017年に「ハロプロでも歌えるように、歌詞を"眼鏡の男の子"に修正しよう!」との命を受け、現在のストーリーが完成。
その時点ではどこかのグループのアルバム曲あたりを目指して作っている感じでした。
それが2018年に入ってから新グループ用にブラッシュアップしていくということになりました。
新グループのコンセプトとして「身体表現」「演劇・コメディーの要素」といったものがあったので、とにかく「普通じゃない曲に!」という発注だったように思います(汗)
ということでまず手始めに冒頭1分程の寸劇を入れ、イントロ部分には徳光和夫さんを意識した前口上を入れ、2番頭にユルめのラップパートを入れました。
アレンジ面は全体的に「チップチューン×トラップミュージック」を意識し、ファミコンサウンドのピコピコ感とハイハットの連打感で可愛くコミカルな要素を取り入れました。
また鉄道オタクであるリーダーの一岡さんに喜んでもらえるように、電車のブレーキ音を入れたりもしました。
そしてこの曲で最も重要な要素である「演出」を担当されたのが野沢トオルさんです。
まず僕の書いた冒頭1分程の寸劇の登場人物は、当初3人でした。
眼鏡くんに恋する女の子、女の子を応援する同級生、そして眼鏡の男の子。
これを野沢さんが9人、のちに12人の登場人物へと拡張していきました。
この演出によってこの曲が劇的に面白く、良い意味でゴチャゴチャした複雑な味わいに変わっていきました。
これは僕一人では到底考えつかなかったアイデアであり、さらに「普通じゃない曲!」に形を変えていきました。
僕が初めて生で「眼鏡の男の子」のパフォーマンスを見たのが2018年夏のハロコンでした。
自分で作った曲のはずが、1回観ただけでは全容を把握できないし上手く消化できない。
観終わった後にポカーンとしてしまいましたが、そのあとすぐに「もう一回観てみたい!」という気持ちになりました。
それは、面白い映画を観た後の感じに似ているなと思いました。
音楽的にもストーリー的にも演出的にも、いろんな要素をこれでもかと詰め込んでいるので一度観ただけでは消化出来るはずもありません。
だからこそ何度でも観てしまう、というような中毒性がこの曲にはあるのだと思います。
そして何と言ってもこの難しい曲を見事に歌い、表現し、演じてみせたBEYOOOOONDSの皆さんは素晴らしいと思います。
特に眼鏡の男の子役の前田こころさんのハマりっぷりは予想以上で、本当に驚きました。
他のメンバーが演じる愛すべきキャラクターもまた味わい深く、見応えがありますね。
僕にとって大切な曲がBEYOOOOONDSにとっても大切な曲になったのかなと思うと感慨深いです。
自分の曲が我が子だとすると「ようやく最高のパートナーに巡り会ったな」と親として誇らしく思うのであります。
星部ショウ
作曲・編曲を担当いたしました。
この曲は野沢トオルさんの書いた歌詞を頂き、それにメロディーをつけていった詞先の曲です。
印象的でありながらも別のアルファベット3文字が頭をよぎってしまうようなサビの歌詞を見て、ニヤリとしたのは言うまでもありません。
まず最初に作ったオケは、ビート重めの3コードファンクにラップ主体でAメロBメロを歌い、サビで明るくなるような構成でした。
ちょっとイマイチだということで作り直したのが、現在のユーロビート主体のオケです。
もっと言ってしまえば、あの2018年大ヒット曲の外角ギリギリを掠めるような曲にするべく思いついたのが「TKサウンド」という方法でした。
何をもって「TKサウンド」と定義するのかは人それぞれだと思いますが、僕が一番重要視したのは音楽理論の面です。
作曲を勉強していくとコード進行の定番の型を勉強することになると思うのですが、その定番の型に「TK進行」なるものがあります。
90年代のヒット曲を彩った売れ線コード進行で、「Am → F → G → C」という基本の型です。
ただオリジナリティーを求める作曲家的にはこの型をそのまま使うことはなるべく避けることが多いと思います。
使うにしてもこの型を分解して違う進行に変形させるとか、自分なりの創意工夫を施すものです。
ですが今回は今までの考えを取っ払って開き直って、思い切り「TK進行」でサビを作りました!
作ってみて改めて感じましたが、やっぱり素晴らしい進行ですね、好きです。
いろんな調味料試したけど、なんだかんだ醤油が一番好きっていう感じに似てます。
僕自身も世代的にTKサウンドで育っていますので、まさにD・N・Aに刷り込まれている進行だと改めて気づかされました。
その他にも随所にTKリスペクトなコード進行を盛り込んでいます。
例えばBメロからサビまでの進行が「革命」的であったり、サビへの転調の仕方が「ワイルド」であったり。
あとTK作品でサビのメロディーがたった2音で構成されている「簡単なダンス」曲があるのですが、D・N・Aのサビは3音で構成していたり。
ということで大先輩の作品群に敬意を払いつつ、改めて真剣に音で楽しく遊ばせていただきました!
野沢トオルさんから頂いた歌詞には最初から「イントロ中セリフ」とあったり、「間奏ラップ」とあったり既に構成のアイデアが記されていました。
なのでこの曲も「普通じゃない!」と作りながら思ったものです。
特にイントロラップ部分の平井美葉さんのパフォーマンスはカッコよくて痺れますね。
BEYOOOOONDSの舞台を観たときも感じましたが、平井さんの声はジブリ映画の主人公の少年みたいに真っ直ぐで良いなと思います。
この声は今後BEYOOOOONDSの武器の一つになっていくのではないかと感じています。
この曲は編曲もさせていただきましたが、朝井泰生さんのギターが入ってこの曲が完成したなと思いました。
それもそのはず、僕が90年代に聴いていたあの曲もあの曲も朝井さんのギターサウンドだったのですから!
イントロやアウトロのギターソロはほぼ一発OKですからね、大リスペクトでございます。
この曲の一番最後「ニッポンノD・N・A!」とメンバーが叫んでいる後ろで鳴っているピンポンディレイのギターは必聴です。
90年代当時実際に使っていた、左右に振れるピンポンディレイの音ですよ。
星部ショウ
作詞・作曲を担当いたしました。
この曲は2018年10月のハロフェスにて初披露された、「眼鏡の男の子」のスピンオフ作品です。
「眼鏡の男の子」設定を活かしつつ、次なる曲はどうしようかと考えた末に出たアイデアが文化祭ネタでした。
最初から文化祭実行委員長の恋を描いてはいましたが、第一稿は模擬店で焼きそばを作ったり女装コンテストに出たり後夜祭で花火見たりと要素が沢山ありました。
それを女装コンテスト一本に絞り、眼鏡の男の子が女装コンテストに出場して優勝するという我ながらよく分からない設定に落ち着きました。
「眼鏡の男の子」の寸劇テイストを継承し、冒頭は女装コンテストの司会者の声でスタートしたり。
Aメロの「ねぇちょっと男子!」「なぁに?」みたいにコール&レスポンス出来るセクションを作ったり。
間奏明けの結果発表の場面では、ドラムロールになる構成にしたり。
この曲でも「普通じゃない!」様々な仕掛けを施すことに命をかけながら作っていきました。
そしてこの曲でもさらに普通じゃない演出を入れてきたのがご存知、野沢トオルさんです。
女装コンテストの着替えをステージ上で手持ちのカーテンに隠れながらおこなうという演出。
こういうTVショーや舞台は観たことある気がしますが、こういう音楽は今まで観たことがありませんでした(笑)
僕も僕で結構普通じゃないことを考えているつもりですが、世の中には必ず上には上がいらっしゃるものですね。。。
まだまだ修行の足りない未熟者です。
このような一人では到底考えつかないようなアイデアの化学反応がBEYOOOOONDS曲の醍醐味だったりするのかなと思います。
キャッチボールしているうちに予想もしないあらぬ方向へと飛んでいって、それすらも楽しんでしまうというか。
そういう意味じゃ即興的だし実験的だし尖っているし、魅力的なグループだと思います。
そもそもこんな作家の無理難題をしっかりと形にしてくれるBEYOOOOONDSが一番すごいんです!
音楽的なことを言うと、イメージは70年代後期のアイドル歌謡といったところでしょうか。
ロックな仕上がりですが、曲調的には懐かしい感じがするのではないでしょうか。
最後に「眼鏡の男の子」とこの曲の時系列を整理すると、毎朝電車で見かけていた眼鏡の男の子の姿がなくなったのが文化祭準備期間のあたりでしょうか。
眼鏡を外した男の子と彼女が手を繋いで別の車両で発見されるのが数ヶ月経ってから位?
ということで「眼鏡の男の子」の純粋な続編ではなく、ストーリーの間に挿入された別のストーリーという感じなんですね。
なるほど!(他人事のように。。。)
星部ショウ
作詞・作曲を担当いたしました。
BEYOOOOONDS内の4人組ユニット「CHICA#TETSU」の曲として、2019年冬のハロコンにて初披露されました。
このユニットの楽曲コンセプトは、「明るく可愛く」「YMOから派生したようなテクノポップ感」そして「地下鉄・電車」でした。
別の5人組ユニット「雨ノ森 川海」とは対照的なコンセプトです。
曲はとにかく可愛く、洗練された音楽性、そして遊び心を大切にしながら作りました。
まずは「こんなイメージの曲を!」ということでピックアップされたのが、矢野顕子さん「春咲小紅」やEPO「う、ふ、ふ、ふ、」。
2曲に共通することは、音楽的には「オシャレなコードと転調」が肝になるということ、そして楽曲コンセプト的には「化粧品CMソング」であるということです。
「オシャレなコードと転調」に関しては、この曲のAメロ・Bメロ・サビでそれぞれ違うキーに転調させています。
後付けですが、メトロを乗り換えるが如く3つ上のキーに転調して最終的には元いた場所に戻ってくるような構成にしています。
しかしながら「う、ふ、ふ、ふ、」のサビへの転調の仕方を分析すると、神業といっても良いほど見事です!(4つ下に転調)
「化粧品CMソング」に関しては、歌詞の内容というよりはそのキラキラ感や透明感を参考にしました。
そしてサビに商品名が来たりすることもあって、サビがとにかくキャッチーであるということが重要だと思いました。
そんなことを考えながらメロディーとオケを作っていき、歌詞をどうしようかと悩んでいました。
残りのコンセプト「地下鉄・電車」をどう絡ませたら上手くハマるかなと考えていると、サビ後半のメロディーに「深く深く・・・」というリフレインが浮かんできました。
「深いといえば地下鉄。そういえば都営大江戸線の六本木駅って日本一深い地下鉄の駅だよな」とか。
「あと深いといえば愛。私のことどれくらい好き?って聞かれて六本木駅くらいって返すのどうかな」とか。
色々考えているうちにサビのフレーズ「都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて」というワードが出てきました。
可愛い曲なのに「大江戸線」っていうだいぶ渋いワードが逆に良いかなと思ってこのサビにしました。
BEYOOOOONDS曲の歌詞を考えるときは特に「ププって笑えたり、ツッコミ入れられたりする内容か否か」が重要だと感じます。
違和感は大切で、それどういう意味?とか、変な言い回し!みたいなツッコミが入れられると印象的になるのかなと思います。
「ゾッコン」とかも言葉が古っ!てツッコミ入れやすいなとか、「一岡豆知識」とかも突然何か始まったぞ!みたいなツッコミ入りそうですし。
でもこの曲もCHICA#TETSUのパフォーマンスで観ると、ちゃんと可愛く成立するんですよね。
この辺がアイドルソングの懐の深さを感じます!
もっとププって笑えるような、コミカルだけど可愛い曲をCHICA#TETSUには作りたいと思っています。
ということで長々と書いてまいりましたがまとめると、BEYOOOOONDSは今すごくアツイということです!
おわりに。
昨年2018年夏のハロコンでDA PUMPとBEYOOOOONDSが同じステージに立って「U.S.A.」をパフォーマンスしているのを拝見しました。
純粋にDA PUMPの飛び入り参加にものすごく沸きましたし、生の「U.S.A.」のパフォーマンスには感動しました!
そしてその反面ちょっぴり悔しかったのもまた事実です。
「ハロプロファンの皆さんがこんなに熱くなれる曲を書かなければいけないのは、ハロプロに携わる作家であるべきではないか?」
「今僕が作らなければいけない曲は、こんな風に自然とダンスを真似したくなったり、自然と歌えちゃうようなハッピーな曲なのではないか?」
そんなことをDA PUMPとBEYOOOOONDSのコラボパフォーマンスを観ながら感じました。
暗いニュースやギスギスした人間関係でどこか生き辛さを感じる時代でもありますが、そんな時こそハッピーな歌が必要になる気がしています。
人に元気を灯すようなハッピーな作品を届けられるよう、音楽の力を信じてこれからも精進していきたいと思います。
頑張れBEYOOOOONDS、頑張れ自分!
(早く新曲作んないと。。。)
星部ショウ